子どもに運動させれば学力は向上する?【因果関係の話】
今回は非常に重要な内容です。
心して読んでください。笑
タイトルにもありますが、『因果関係』についてです。
因果関係…
「2つのことがらのうち、どちらかが原因でどちらかが結果である」(中室・津川、2017)
言葉はみなさん聞いたことあるだろうし、意味もなんとなくはわかってると思います。
ただし、データを扱う経済学においては、この『因果関係』が成立するか否かは超注目事項です。
そこで今回は、「体力テストの結果が良い生徒は、学力テストの成績も良い」という事実を例に因果関係の重要性について紹介したいと思います!
今回この記事を書くにあたって、大いに参考にさせていただいたのが、『「原因と結果」の経済学』(津川友介・中村牧子)です。
(というか内容そのまんま)
因果推論に関する入門書としては、一般向けで最高に読みやすい本です!!
ぜひ読んでみてください!
子どもに運動させれば学力は向上する?
先にも書いた通り、「体力テストの結果が良い生徒は、学力テストの成績も良い」という関係性はデータからも明らかです。
これに関してはなんの間違いもありません。
なら、子どもの学力を伸ばしたいから、運動をさせよう!
そう考える人もいるでしょう。
子どもに運動をさせて体力テストの結果を良くすれば、自ずと学力テストの成績も良くなるのでしょうか?
みなさんどう思います??笑
実はそこに因果関係の大きな罠があるんです。
『因果関係』と『相関関係』
まあ、こんだけもったいぶったので予想はついたかもしれませんが、結論から言うと
体力テストと学力テストの間には、因果関係は存在しません。
???な方もいるかもしれませんが、落ち着いて考えてください。
子どもに筋トレをさせました。
それはもうスパルタで。
勉強する暇もないくらいに。
そうするとどうなるでしょうか。
学力テストの成績が上がると思います?笑
まあ、上がりませんよね。
これが罠なんです。
体力テストと学力テストの間に因果関係はない。
この2つの点数の間にあるのは『相関関係』です。
相関関係…
「2つのことがらに関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にあるとは言えない」(中室・津川、2017)
つまり、「体力テストの結果が良い生徒ほど、学力テストの成績も良い」、ただそれだけを示した関係だってことです。
「体力テストの結果が良いから、学力テストの成績も良い」わけではありません。
こうした因果関係と相関関係の読み違いによって何が起こるかというと、
必ずしも結果に繋がらない行動に対して、多大な時間と費用をかけてしまう可能性があります。
言わずもがな、時間とお金というとても大切なものを無駄にしてしまうのは避けたいですよね。
以前も似たようなことを書いたかと思いますが、教育経済学とはこうした「無駄遣い」をしないために、施策に対してエビデンスを授けることが役割の一つでもあります。
『因果関係』の見分け方
このような「見せかけの相関」に騙されないためには、2つの事柄が因果関係によって結ばれていることを見極めなければなりません。
それを経済学では、『因果推論』と呼びます。
因果推論を身につけることがデータを用いた研究では必要不可欠です。
僕も大学院でこういう勉強を早くやってみたいなぁとワクワクしております。笑
さて、ではどうやって因果関係か相関関係かを見分けるのか、です。
「見せかけの相関」には以下の3つのパターンがあります。
- 全くの偶然による相関関係
- 第三の要因が存在する
- 因果関係が逆
1つめの「全くの偶然による相関関係」は2つの事柄に強い相関関係がありながらも、両者に関連が全くない、偶然による相関関係のことを指します。
例えば、「ニコラス・ケイジの年間映画出演本数とプールの溺死者数」の間には相関関係があります。
いやいや関係ないやろ!と言いたくなるような比較です。笑
よくこの2つを比べてみようと思いましたね。
当然ながら、この2つの事柄に因果関係はありません。
「全くの偶然」です。
2つめ、「第三の要因が存在する」。
これはとても重要なチェックポイントです。
今回のブログのテーマでもある、「生徒の体力テストの結果と学力テストの成績」の関係はこの2つめのパターンに当てはまります。
先にも書いた通り、この2つの事柄に因果関係はありません。
なので、体力テストと学力テストの双方にプラスの影響を与える第三の要因があると考えます。
それはこの場合、「親の教育熱心さ」でしょう。
教育熱心な親は子どもにスポーツをやらせようとするし、同時に塾などにも通わせます。
このような第三の要因により生まれた「見せかけの相関」は他のパターンと比べて、一見関係がありそうに見えてしまうことが多いです。
第三の要因を考慮せずに教育投資をしてしまうと、水の泡になってしまうかもしれません。
くれぐれもご注意を!
最後のパターンは「因果関係が逆」の場合です。
どういうことかというと、
因果関係はどちらかが原因でどちらかが結果であるはずなので、「〜だから、〜。」とならなければなりません。
それが正しい順序になっているか、ということです。
「警察官が多い地域では、犯罪件数が多い」という関係があったとします。
では、
・「警察官が多いから、犯罪件数が多い」
・「犯罪件数が多いから、警察官が多い」
のどちらの関係かを考えてみましょう。
なんとなくわかりますよね。
答えは後者です。
犯罪件数が多い地域には警察官をたくさん配置する必要があります。
こんなのが「逆の相関関係」です。
ほとんどの見せかけの相関は、これら3つのパターンに当てはまります。
正しく因果関係を見極めて、「無駄遣い」を減らしましょう!
まとめ
まだまだ書くべきことはありますが、今回はこのへんで。
「子どもに運動をやらせれば学力は上がる!」と思い込んで間違った教育投資をしてしまってはいけません。
ただし、運動が全く学力に関係ないかと言われればそうとも言い切れないこともあるので、さらなるデータによる実証が必要でしょう。
僕自身、これまで部活と学業を両立してきて、考える力やGRIT(やりきる力)を伸ばせたと実感するので、それが学力に影響している面は多いと思います。
大切なことは、しっかりと相関関係か因果関係かを見極めないまま意思決定をしてしまうと、取り返せない損失が生まれてしまう可能性があるということです。
家庭での損失ならまだしも(よくはありませんが)、これを政策レベルでやらかしてしまうとヤバいです。
そして、残念なことに、因果関係のはっきりしない根拠のない通説でありふれているのが、「教育」と「医療」の世界なのです。
一番エビデンスが必要な分野である気がするんですが、、
日本は、日本人は、そういったことにもっと興味を持つべきです!!
これを機に教育経済学に関心を!!!笑
以上、読んでくださってありがとうございました!
ぜひ当ブログの宣伝を。。。笑