教員の質と生徒の学力の関係
久しぶりに教育経済学についての記事です。笑
僕がゼミの期末レポートとして行った研究の一部を紹介します。
僕はこれを機に教育経済学っておもしろい、こういうことを仕事にしたいと思いはじめました。
テーマは、
「教員の質は生徒の学力にどのような影響を与えるのか」
です。
数字を用いて統計的に分析していますが、そんなに難しい内容ではないので最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
※あくまで学部生が期末レポートとして作成したものなので、あしからず。
教師の頑張りの「見える化」
期末レポートの内容として、「教員の質と生徒の成績の関係」を選んだのには理由があります。
実は僕は昔、学校の先生があまり好きではありませんでした。
学校の授業は周りに合わせたペースで進んでいくので、(特に小中学校の時は)自分には授業がつまらなく感じることもあって、その不満というか退屈さを先生のせいにしてたんだと思います。
今考えると子どもですね。笑
しかし、母が教師として働き始めることになって、少し考えが変わりました。
母は家でも授業の準備などで忙しくしていて、帰ってくるのも遅くなることが多いです。
でも家で生徒たちのことを話してくれる母親の顔にはいつも充実感があります。
そんな母を見ていて、教師とは素晴らしい仕事だなと思うと同時に、こんなに頑張っているのに子ども達には成果が認めてもらえないのかな、と悲しい気持ちになりました。
先生のことをてこでも認めなかった生徒は僕くらいだったかもしれませんが。笑
そんなこんなで、先生たちの頑張りを目に見える形にして、その頑張りが実を結んでいることを証明したかった、というのが一番の理由です。
教育生産関数の推計
どうやって教員の質を「見える化」したかというと、いろいろなやり方があるとは思いますが、今回は教育生産関数を推計しました。
教育生産関数については、2回目のブログでちらっと書いてます。
読んでない人はこっちから↓
教育生産関数を推計するために、学校要因と家庭要因に分けて、データを集めました。
データは基本的にTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)から借りました。
TIMSSのデータは、特定の生徒たち、および教員の数学・理科それぞれの成績、そして学校生活にかかわる様々なアンケートに対する回答結果などが変数化されています。
よくわかんない人もいるかとは思いますが、大事なとこはここではないので、あまり気にしないで次行きましょう!
下の表が学校要因と家庭要因としてそれぞれ使用した変数です。
(本当はもっといろいろな変数を入れるべきだとは思います、、、)
「教師の質」は学校要因に入りますが、今回一番見たいのは教師の質なので、分けてまとめました。
あとはこの変数を統計ソフトでポンとやれば重回帰分析ができます。笑
便利ですねー(棒
回帰モデル(生産関数を推計する計算式)はこんな感じ↓
重要なのはここから!
重回帰分析の結果です↓
わけがわからないかもしれませんが、t値とかp値は計算結果が統計的に優位かどうか判断するためのものなので、p値が0に近ければおkと思っておいてください。
点数は100点満点ではないので切片が266になっててもおかしくないです。
見てほしいのは「係数」です。
係数がプラスであれば生徒の成績に正の影響があります。
数字の大きさは影響力の大小です。
分析結果を踏まえた回帰モデルの見方を簡単に説明すると、
テストの点数
=切片+(それぞれの係数×投入の度合い)+誤差項
となります。
これだけだとわかりにくいので具体的に計算してみます。
例えば「教師の学歴」に注目すると、
学士は下から5番目にあたる学歴なので、
【最終学歴が「学士」の場合】
11.29493(係数)× 5(学士)= 56.4715
となり、大卒の教員が生徒のテストの点数に貢献したのは56.4715点分
ということになります。
このようにそれぞれの係数に対してどれだけ貢献したかを推計し、足し合わせ、教育生産関数を算出します。
分析から「気づき」を得る
今回のテーマは、「教員の質が生徒の成績に与える影響」なので、上の表で黄色く色をつけた部分について考えます。
ここまででわかったことは、
- 学歴を積み上げた教師ほど生徒の成績にプラスの効果を与える。
- 教師同士で協力しあえる環境は生徒の成績を伸ばす。
- 生徒を触発させる能力は成績に影響しない。
- 教員歴の長さが与える影響はとても小さい。
- 女性教師は男性教師に比べて生徒の成績を伸ばす傾向がある。
です。
やはり教師の学歴は影響力が大きいんだなぁ。
ふーん、教師同士で協力しあえる環境かー。
ほら!女性教師バカにすんな!!
みたいに思ってくれればそれで十分です。笑
「気づき」が生まれるだけで意味があります。
まとめ
このように教育生産関数を推計することで、今まで言われてきたことが正しかったという証明にもなるし、反対に従来の教育が間違っていたことも示唆します。
もちろん今回の分析はただの学部生が作ったおもちゃレベルなのでエビデンスもクソもないということはご理解いただきたいです。笑
「教師の頑張り」がどれだけ見える化できたかは怪しいし、分析技術的にもまだまだで決定係数は低いです。
でも、こんなのが教育経済学とか教育社会学と呼ばれるもので、有意義なものであるということを伝えたくてこの記事を書きました。
データから教育を読み解く。そういうのもこれからに時代確実に必要です。
(というか、他の先進国ではとっくに常識になってます。)
これを理解することで、研究者が何を言っているのかある程度理解することができます。
教育政策を掲げる政治家にとってもデータに基づくエビデンスは武器になりえて、教育改善を公約などに掲げることも多いでしょう。
そういった情報を誤解なき眼で見るために、「データから教育を読み解く」ことを学んでみるのもいいんじゃないでしょうか。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!!
では、また次回。