費用対効果の高い政策を!【ナッジとは】
こんにちは、しんです。
今回は僕がゼミの教授のリサーチアシスタント(RA)を通して学んだ「ナッジ」について書きたいと思います。
ナッジとは
守秘義務があるので詳しくは書けませんが、僕がRAとして関わった研究テーマは「ナッジ理論を利用したインパクト評価」でした。
僕はそれまでナッジという言葉を聞いたこともなかったので、とても勉強になりました。
僕と同様に聞きなれない方も多いと思うので簡単に解説していきます。
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2017年、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授によるナッジ理論に関する研究がノーベル経済学賞を受賞しました。
それを機に各方面でのナッジ理論の研究と活用が最近の流行となっています。
「ナッジ」というのは、英語で書くと ”nudge” (肘で軽くこづく)です。
肘で軽くこづく程度の干渉でさえ、人の行動を大きく変化させることがあることからその名がつきました。
感覚的に言うなら、「買うか迷っている服を店員さんの一押しで購入に踏み切る」みたいな状況ではナッジが働いている、ということになります。
現実的な人間の行動を経済学的に分析する行動経済学の観点から、近年注目を集めているテーマの一つです。
これだけだとまだ不十分なので、次の章でより具体的に説明したいと思います。
費用対効果
ナッジ理論が注目を浴びている理由の一つとして、費用対効果の良さが挙げられます。
費用対効果というのは読んで字のごとく、費用に対する効果の大きさです。
どんなに有効な政策であろうと、そのために多額の費用がかかってしまうのであっては意味がありません。
例えば少人数クラスで学力を向上させようとすると、その分多くの教員が必要になります。
生徒が受ける少人数クラスの恩恵とそれに伴う教員の増加に要するコストを考えると、費用対効果の重要性がわかると思います。
クラスサイズを小さくして各学年の教室を一つずつ増やしたとすると、教員1人の年収が400万円だとしても400万×6=2400万円が必要となります。
これを全国全小学校でやろうとしたら、大変なことになりますよね。
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では、ナッジはなぜ費用対効果が良いのでしょう。
理由は簡単です。
ナッジというのは、「肘で軽くこづく」だけなので、それにかかる費用はとても小さい。
なにかのオンラインサイトの会員登録の画面を思い浮かべてみてください。
『メルマガを希望する』に初めから☑︎がついてること、よくありますよね。
あれもナッジの一種です。
初めから☑︎を付けておくことによって、登録に迷っている人はそのまま☑︎を外さないでしょう。
言い方を変えると、「初めから☑︎が付くようにサイトをプログラミングする」だけでメルマガの登録人数を増やせるということです。
別に僕はプログラミングに詳しいわけではありませんが、会員登録者一人一人に「メルマガもいかがですか?」と聞いて回るよりはよっぽど手間がかからないのは簡単に想像ができます。
有効な政策を!
このように、ナッジ理論は人間の行動に密接に関わります。
行動経済学の見地からは、より一般の人に親しみやすいエビデンスが得られます。
さらにEBPM (Evidence-Based Policy Making) が推進されるためには、それを進める政府側がエビデンスとは何か、有効な政策とは何かをはっきりと理解していなくてはなりません。
しかし、日本では他の先進国と比べてどうもエビデンスというものが軽視されている感が否めません。
特に教育の分野では教育政策の効果測定を行う研究者そのものが少ないですし、EBPMに逆行した教育政策なども見受けられます。(幼児教育の無償化など)
有効な政策に必要なものは、
- エビデンス(因果関係の有無)
- 実質的効果の大きさ
- 費用対効果の高さ
だと僕は考えています。
こうした考えが広く浸透すればより日本の社会は安定するだろうし、研究者も報われます。
エビデンスに基づかない主張は国家にとって不利益です。
正確な研究による正当なエビデンスを持ってそうした主張を跳ね除けられる強い政府であってほしいと願います。
以上です。
お付き合いありがとうございました!