根拠のある教育を!

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〜教育について考えるブログ〜

【読書感想文#2】『学力・心理・家庭環境の経済分析ー全国小・中学生の追跡調査から見えてきたもの』(2016)前編

こんにちは!

 

読書感想文第2弾です。

 

今回読んだ本は、

 

『学力・心理・家庭環境の経済分析ー全国小・中学生の追跡調査から見えてきたもの』

 

です!

 

学力・心理・家庭環境の経済分析 -- 全国小中学生の追跡調査から見えてきたもの

学力・心理・家庭環境の経済分析 -- 全国小中学生の追跡調査から見えてきたもの

 

 

経済学、心理学、社会学など、多方面からの先生方が共同で書いた一冊です。

 

この本は僕がやりたいと思っている「教育をデータで分析する」ことについての先行研究、ということになります。

 

こいつはこういうことをやろうとしてるんだな、と理解してもらえたら嬉しいです。

 

 

数少ない日本での教育経済学の研究事例

この本を選んだ理由は、先にも書きましたが、「教育をデータで分析する」ことを日本人が行なった数少ないケースだから。

 

さらにこの本では、日本で集められた日本人を対象としたデータが使われています。

 

今までは外国の研究結果がメインで、「日本ではどうなんだ!」と結果を認めない方々がおりましたが、日本で得られた結果ならば彼らも認めるしかありませんよね。笑

 

ここで大事なことが、「日本でデータを集めること」自体が難しいということです。

 

日本では教育現場を対象としたデータ収集(実験なども含む)はなかなか認められません。

 

なので、この本では家計を対象とした簡単な学力テストおよびアンケート調査により、データを集めています。

 

それが『日本子どもパネル調査(JCPS)』です。

 

さらに、この本の執筆およびデータ収集には僕が目指している大学院の教授も参加しています。

 

それが読み始めた一番の理由と言ってもいいかもしれません。笑

 

研究内容とその目的

では日本のデータを使って何を調べるのか。

 

端的に言うならば「経済格差」です。

 

日本をはじめとした先進諸国は、経済格差とその固定化に悩まされています。

 

特に、日本では経済格差の原因や対応政策に関するエビデンスが圧倒的に足りていません。

 

そのため、日本独自の「学力・心理・家庭環境などのデータ」を集めて分析しよう、というのがこの本の目的です。

 

グレート・ギャツビー曲線

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突然ですが、上の図を見てください。

 

これはグレート・ギャツビー曲線といって、世代間の所得格差がどれくらい固定化されてしまうのかを表しています。

 

わからない言葉があると思うので、超簡単に説明すると、

 

ジニ係数

…経済格差を表す指標。0〜1の値をとり、0が完全平等、1が完全不平等です。

 

世代間の所得弾力性

…親の所得が1%上がると、子の所得は何%上がるのかを示します。一番高いアメリカでも子の所得は0.6%ほどです。

 

 

世代間の所得弾力性がちょっと難しいと思うのでさらに説明しますね。

 

  • 親の所得が1%上昇
  • 子の所得が0.6%上昇

の場合と

  • 親の1%上昇
  • 子の所得が0.1%上昇

を比べてみましょう。

 

上の例は、「親の所得が高いほど子の所得も高い」と言い換えられます。

 

つまり、「親の所得と子の所得の間の連動性が高い」

ということです。

 

対して下の例は、「親と子の所得の連動性が低い」ですよね。

 

それが何を意味するかというと、

「連動性が高いほど、貧しい家庭の子どもが努力してお金持ちになれる可能性が低い」

→格差の固定化

です。

 

 

ギャツビー曲線の話に戻ると、

 

グラフが右に行く(ジニ係数が大きい)ほど格差が大きく、上に行く(世代間の所得弾力性が高い)ほど格差が固定化されやすい、というように解釈できます。

 

実際のギャツビー曲線の右上に位置するのは、アメリカやイタリア、日本などです。

 

逆に左下には、北欧諸国が位置します。

またもや北欧諸国は優秀ですね。笑

 

経済力的にはそれほど大きな差がないにもかかわらず、ギャツビー曲線上では、右上と左下に分布が分かれています。

 

つまり、経済格差とその固定化は経済成長の上で仕方のないものではなく、改善可能な余地がある、ということです。

 

人的資本論

教育を経済学的観点から見るにあたって、大事な理論が『人的資本論』です。

 

かいつまんで言うと、人的資本論では

教育は、「現時点で費用を支払い将来の価値増加を期待する投資」と定義されます。

 

この場合の〈費用〉と〈価値増加(リターン)〉はどちらも、金銭のみを表しません。

 

例えば、教育に〈時間〉を費やし、得られたリターンとして〈学力の向上〉などが挙げられます。

 

人を資本として考える

教育を投資として考える

 

そうすることでより計量的・統計的に分析することが可能になります。

 

これが実は大事なんです。

 

第一章の内容だけで2000文字を超えそうなので、今回はこのくらいに。笑

 

後編もそのうち書くので、良かったら読んでください。

 

具体的な分析方法や、分析結果から見えてくるものは後編で!

 

ありがとうございました!